継続テーマ:熊本震災と地方創生


 
国家の使命を世界秩序の覇者とする米国は、ユーラシアにおける覇権国家の出現を許さない国家意思を有します。しかし、インド太平洋における戦略的構想が乏しく、アジアに米国と同盟・友好な関係にある民主主義国家群がありながら、インド太平洋における政治的なリーダーシップを把握できずにいます。
そして、その間隙を突かんとしてしているのがRising Chinaであり、その伸張は米中対決を危惧させ、「トゥキディブスの罠」として知られる2500年前のスパルタとアテネの戦いを思い出させます。
アジア西太平洋における米国の影響力を削ごうしている中国は、沿岸に1000発以上の対艦ミサイルを配備、また、魚雷とミサイル搭載の潜水艦62隻がパトロールし、既に、米軍艦は中国沿岸から1600km以内の海域では活動できなくなっています。
米国の空母などの主力艦を中国の近隣海域から追い払うためのA2/AD(接近阻止/領域拒否)などにより、米軍の西太平洋における軍事的優位が明らかに崩れつつあります。
米国のランド研究所が2015年に発表した「米中軍事比較」は、台湾に関しては、通常兵器の9領域の6領域で、南シナ海では4領域で、中国は米国と同等あるいは凌駕する軍事力を獲得しており、今後、5ー10年以内に、アジアにおける米国の中国に対する軍事的優位性は「着実」に後退するとしています。
同報告が現実のものとなれば、現在、年間約5.3兆ドルもの海運交易を担う南シナ海を、中国が支配し、ユーラシア諸国を「統合」させる地経学的戦略である「一帯一路」を実現させ、マッキンダーが100年前に述べた「世界島(ユーラシア)を制するものが、世界を制する」を中国が体現することも、あながち、夢物語ではないでしょう。
日本は、大陸国家に加え、海洋国家としての存在感と実力を強めつつあるその中国の優位性を覆し、アジア太平洋地域の政治・経済・安全保障の新秩序を構築する歴史的使命を有します。
しかし、日本は安全保障に関する「法的対応」に問題を抱えています。それに関しては、冨澤様が、憂国の書である新著「軍事のリアル」(新潮新書)の第4章「集団的自衛権論議はどこかズレている」などで、鋭く迫っておられます。
その問題を解決しない限り、中国の地経学的戦略「一帯一路」への対応として、経学的戦略たるべき「インド太平洋戦略」の具体的構築とその実行に、日本は参画できないと思います。
覇権国家は、自らに有利な金融経済体制を構築します。
米国は、ベトナム戦争により疲弊し、相対的な経済力が劣化し、金・ドル本位制によるリスクを米国は負担できなくなりました。
追い詰められた米国は「狡猾な戦略」により、1973年、変動為替相場制にシフトし、ブレトンウッズ体制を「崩壊」させました。そして、米国は、冷戦の緩和への動きの中、新自由主義経済思想を巧みに「使嗾」し、「小さな政府」「財政健全化」「規制緩和」「金利の自由化」「市場原理」「民営化」をコンセンサスとする「ワシントン・コンセンサス体制」を構築しました。
 ブレットン・ウッズ体制の崩壊が福祉国家資本主義を衰退させ、新自由主義経済思想による「ワシントン・コンセンサス体制」は、「金融のグローバル化が市場メカニズムを機能させ、効率的な資源配分により、世界の経済厚生を最大化するという理論」を振りかざしたものでした。
しかし、「ワシントン・コンセンサス体制」は、経済の金融化、グローバリゼーションを促進し、金融市場の変動リスクを高め、貧富の差を拡大し、社会を不安定化させました。そして今新自由主義経済に替わる新たな経済・金融システムが望まれています。
「一帯一路」」を促進する中国の経済的戦略目的としては、少なくとも下記が挙げられます。
・数兆ドル規模の「一帯一路」インフラプロジェクトにより、過剰生産設備を有する中国の鉄鋼業、セメント業を救済する。
・上記にも関係して、中国国営企業(現在の負債総額はGDP比で145%、政府負債はGDP比で17%)の負債の圧縮
・内需主導経済へのシフト
・非効率な国営企業の再編・閉鎖
・科学技術基盤強化によるイノベーションの推進
中国経済社会の問題点は、富の偏在による社会の不安定化、少子高齢化、環境劣化による健康問題など、他国と共通するものです。それらを解決し、中国を含む諸国の経済社会を安定させ、人々の潜在能力を開花させるためには、限界が生じている新自由主義経済体制を見直す必要があります。
「インド太平洋構想」は、新自由主義経済思想を代替しうる体制理念を体現することにより、「一帯一路」を凌駕、包摂することができると考えます。
活発な議論の展開を期待申し上げます。


  慣習的に国際海峡と見做される津軽海峡、大隈海峡などにおいて、沿岸より12海里を国際法上の領海とすると、通過航行権を与えられた軍艦は核兵器を搭載していても,自由に海峡(日本の領海)を通り抜けることができます。
 
  よって、非核三原則(核兵器の持ち込み禁止)との抵触を避けるために、日本は、沿岸より12海里以内が国際法上の領海であるにも拘らず、沿岸より3海里以内を「領海」として、それ以遠を公海とする「特定海域」に指定しています。
 
  その結果、津軽海峡、大隈海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道そして宗谷海峡の「特定海域」は、中国艦船の太平洋進出の「抜け穴」となっています。
 
  自らを非核三原則で縛り、その挙句、国家安全保障を脆弱にしている一例です。今後、米中の関係が「実利的」になっていくと、米中交易に大事な大隅海峡(東シナ海と太平洋を結ぶ鹿児島県・大隅半島沖)を米中が握り、太平洋を米中が「分割」することに繋がる恐れがあります。
 
  非核三原則により領海を狭めているのが、憲法9条下の日本です。領海に対して、日本はもっと「戦略的鋭敏さ」を持つべきです。
 
  大陸棚、排他的経済水域(EEZ)の導入により、国家権力が及ぶ「準国境」が出現しました。
そして、大陸棚、EEZの権利が島嶼についてまわることにより、島嶼(海域)に関る係争が26件に増加しています。その中には、尖閣諸島、竹島そして北方領土が含まれています。
 
  厄介なのがEEZです。国連海洋法条約は、EEZの境界決定に際して、「等距離線で分ける」、「大陸棚の延長で設定する」と二つの異なる考え方を提示しています。
 
 身勝手な中国は、大陸棚の考え方で、東シナ海における権利を主張しながら、南シナ海では、その考え方を引っ込め、「歴史的根拠」を持ち出し、歴史と法解釈の衡平をはかるなどいう国際法軽視の態度をとっています。
 
  紛争が陸から海へシフトしている地政学的環境下で、日本はそのフロントに立たされている自覚を持ち、憲法改正、国家安全保障戦略の再構築とその実行が急務と考えます。
 
  中国が一帯一路構想により、西太平洋、ユーラシアで自らの「影響圏」を拡大しようとしています。
   
 中国海軍は、今年の7月に、地中海、黒海そしてバルト海でロシア海軍と合同軍事演習、さらには、南シナ海でロシア、オーストラリアそしてシンガポールと合同演習を行いました。
 
また、中国は下記のような「戦略手」を打ちつつあります。

  • ミャンマーと雲南省(中国)間に交通インフラとパイプラインの敷設
  • 中国企業がスリランカはハンバントク港の運営権を99年間租借
  • イスタンブール(トルコ)にあるアンバウエス港の施設運営権を中国企 

 業が買収

  • ピレウス港(ギリシャ)の港湾運営権を中国企業が買収

 
 
貿易と国際的安全保障を繋げる中国の国家戦略「一帯一路」の狙いは、「社会主義現代化強国」を築き、2035年には軍事力で米国に追いつき、経済規模で米国を抜き去ろうとしています。
 
では、日本はどうすべきか、日米印そしてオーストラリアの連携を強める「インド太平洋戦略」を踏まえて議論を行いたいと思います。


先日の共産党大会で、習近平は、党規約を改正し、自らの名前が入った社会主義思想を書き入れました。

米大統領(第2代、1797年-1801年)であったジョン・アダムズは「権力者には、弱者には理解できない偉大な精神と広範な世界観が備わっている」と述べました。

しかし、全体主義的権力構造における独裁者には、独善性と残虐性が複合して強まり、「偉大な精神と広範な世界観」は期待できず、他国への強圧的態度、弱者である民を虐げる恐れがあります。

米国の向こうを張り、中国もウエスファリア条約による主権国家を超える「特別な国」であるとする習近平は、戦後、米国が主導してきた秩序に挑戦する「中国モデル」を推進する国家意志を明らかにしました。その国家意志の背後には「華夷秩序」が見え隠れします。

資本主義に内在する構造的不安定さと所得・資産の格差拡大により、社会は不安定化します。中国もその例外ではありません。

それを回避するのが、国家財政であり、中央銀行による信用供与です。中国の国家財政悪化と流動性に欠ける人民元では、富の偏在による社会の不安定化避けられないと判断した習近平は、一帯一路の大胆な戦略を実行し、中国経済圏とそれを支える軍事力の拡大を目指しています。

しかし、本来は、中国は下記のようなアジア太平洋の既存秩序を維持したい筈です。
 One China(台湾問題)
 緩衝国家としての北朝鮮
 日本の憲法第九条
 米中関係の「戦略的安定」
 日本とロシアの平和条約の未締結(北方領土問題未解決)
 日本と韓国の「疎遠」(日米韓軍事同盟締結の困難さ)

中国は、自国有利な「既存秩序」を維持しつつ、アジア太平洋に張り巡らされた米国と友好・同盟国とのネットワークを揺るがし、中国の影響力を高めようとしています。

しかし、人工島建設などの南シナ海への中国の進出という軍事的強硬路線は、米フィリピン安全保障を再起動させ、南沙諸島を巡って中国と争うベトナムは、安全保障を米国に依存せざるを得なくなりました。

また、北朝鮮の核・ミサイル脅威に備えるという「理由」での、韓国へのTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備は、中国に不利な北東アジアの軍事バランスは生み出します。

戦後の日本は、対米従属体制を経済力増強による「経済的ナショナリズム」で糊塗し、何とか、日本の矜持を保ってきました。

しかし、経済力が劣化し、中国の軍事的台頭と北朝鮮の核・ミサイル脅威により、対米軍事的・外交的従属が目立ち始め、日本の矜持は傷つきつつあります。

老齢化、人口減少の時代を迎え、経済的復元力も衰えを見せており、米国、中国、ロシアそして北朝鮮の核に囲まれた日本は、このままでは隘路に追いやられます。

一筋の明かりとしては、日本が提唱してきた「自由で開かれたインド太平洋構想」にトランプ政権も同調したことです。

「地政経済学的」視点で、その構想をどのように具体化すべきでしょうか。皆様と共に議論を行いたいと思います。

l  米国抜きのTPP11RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に対する日本の「地経学的戦略」はどうあるべきか。
l  冷戦後、アセアン諸国が生み出したASEANを中核とした地域アーキテクチャー(例:2015 ASEAN経済共同体設立)を、どのようにアジア太平洋の平和秩序構築に活用すべきか。
l  一帯一路構想は、米国主導のGlobal Governance(アクターである国家、国際機関などが超国家的な課題に取り組む際の統治)への挑戦であり、中国は地経学的国益を念頭に、一帯一路に位置する諸国とのネットワークを拡充していく。それに対する日本のユーラシア戦略とは。
l  米国が北朝鮮の核・ICBMミサイル保有を認め、平和条約を締結した場合、米国の拡大抑止能力(核の傘)は更に形骸化するが、日本はどのような対北朝鮮核抑止体制を持ち、国家、国民を守るのか。
² サブテーマ:衆議院議員総選挙の結果について
² 継続テーマ:熊本震災


 
昨日の衆院選で、憲法改正を党公約の最重要項目とする自民党が大勝し、与党・公明党に加え、改憲勢力である希望の党と日本維新の会を加えると、憲法改正国家発議に必要な衆院定数の2/3を超えました。
 
そして、115日―7日には、トランプ大統領が来日。安倍首相は、10日、APEC参加のためにベトナムを訪問し、13日には、フィリピンで開催される東アジア首脳会議に出席します。
 
中国の習近平総書記は、1018日に開幕した中国共産党の第19回党大会冒頭の「政治報告」で、「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を提示し、富国強兵路線の継続を強調しました。
 
要は、中国は、共産党独裁体制を維持しながら、米国が主導するグローバルな金融・情報通信・交易等のルールを、自国有利に変えていこうとする「野心的な闘い」を仕掛けようとしているわけです。
 
米国と中国が繰り広げるGreat Gameは、危険な軍事的エスカレーションに陥る軍拡競争ではなく、アジア太平洋諸国の安定した経済成長と国民の生活レベル向上に繋がるエネルギー、食料、サイバー・宇宙そして環境などの分野に渡る非軍事的かつ包括的な切磋琢磨であるべきと考えます。
 
米中が東アジアと太平洋を分けるような動きを牽制し、アジア太平洋を「公平で自由な海」にするのが、アジア太平洋の海洋国家たるべき日本の責務であると考えます。
 
日本は、共生を理念とするアジア太平洋平和秩序構想を提唱し、TPPRCEPを融合させ取り込み、その実現を主導すべきです。
 
その戦略とは、日米間の安全保障体制を堅守し、アジア太平洋に、日本、韓国、豪州そしてインドの連携による「包括的な友好の輪」を創り、それがアセアン諸国(米国と2ヵ国間安全保障協定を結ぶタイとフィリピンに加え、インドネシア、マレーシア、シンガポールそしてベトナム)と日本によるもう一つの「包括的な友好の輪」を囲む構想です。
 
上記の二重の「包括的な友好の輪」に加え、日米韓、日米豪、米印韓、日米印・日米豪などの三国間連携そして日米アセアン諸国との連携を具体化させることは、米国のOff-shore Balancerとしての「適合抑止戦略」に柔軟性と強靭性を与え、「公平で自由な海」アジア太平洋に中国を誘うものであると考えます。


北東アジアの多くの国々は、経済と軍事安全保障の「股裂き」の状態にあります。経済面では中国への依存度が高まるなかでも、軍事安全保障においてはSecurity Providerである米国の拡大抑止に守られています。
 
地経学とは「地政学的な国益を守るために、経済的手段を行使する」と定義され、中国はその地経学を「一帯一路」及び「AIIB」で実現しようとしています。
 
米国は、北東アジアの軍事安全保障を、Hub & Spokes(Bilateral・二国間安全保障関係)により支えて来ました。しかし、強まる中国の軍事的圧力に対して、米国の同盟・友好国によるMultilateral(多国間安全保障関係)の具体化が、関係諸国間で望まれています。
 
未だ、明確な北東アジア安全保障戦略を打ち出していないトランプ政権は、Multilateralな対中国地経学的戦略であるTPPより離脱し、二国間(BilateralFTA締結へと舵を切り、敵(中国)に塩を送った格好になりました。
 
明確なGrand Strategyを持たず、自由、民主主義そして人権重視などの普遍的価値を軽視するAmerica Firstのトランプ大統領では、アジア太平洋の平和秩序の理念と具体的な戦略を提唱し、アジア諸国をリードすることはできません。
 
10.24円卓会議では、下記などが議論できれば幸いです。
 
l  米国抜きのTPP11RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に対する日本の「地経学的戦略」はどうあるべきか。
l  冷戦後、アセアン諸国が生み出したASEANを中核とした地域アーキテクチャー(例:2015 ASEAN経済共同体設立)を、どのようにアジア太平洋の平和秩序構築に活用すべきか。
l  一帯一路構想は、米国主導のGlobal Governance(アクターである国家、国際機関などが超国家的な課題に取り組む際の統治)への挑戦であり、中国は地経学的国益を念頭に、一帯一路に位置する諸国とのネットワークを拡充していく。それに対する日本のユーラシア戦略とは。
l  米国が北朝鮮の核・ICBMミサイル保有を認め、平和条約を締結した場合、米国の拡大抑止能力(核の傘)は更に形骸化するが、日本はどのような対北朝鮮核抑止体制を持ち、国家、国民を守るのか。


中国は、共産党独裁体制の維持と拡張のために、アジア太平洋の平和秩序を揺り動かそうとしています。
米国の“国力の劣化”と、中国の金融経済・政治・軍事の包括的国家戦略である「一帯一路」に対抗するTPPからの米国離脱もあり、アジア太平洋秩序に於ける中国の相対的な力が強まりつつあります。
米国は、同盟国・友好国の総合国力(軍事&経済力)を高め、中国の脅威を抑える役割の「肩代わり」をさせる「適合抑止戦略」により、中国との「直接対決」は避け、うまくいかない場合は、Off-shore Balancerとして、中国に立ち向かうという安全保障戦略を有します。
周辺国である日本としては、米国をOff-shore Balancerとして確保しておかないと、国家安全保障が脆弱になります。
ロシアは「一帯一路」と自国の「北極海航路プロジェクト」を結び付け、主要港とシベリア鉄道への中国による投資を期待しています。また、2015年末には、ロシアは中国への最大の石油輸出国となっています。
今後、中ロの関係はさらに深まっていきますが、ロシアに対する中国の相対的な力が強まる傾向にあります。
ロシアはそれを嫌い、核・ミサイル開発を支援して、対米そして対中の「駒」として育ててきた北朝鮮を、今こそ活用しようとしているのでしょう。
経済力の弱いロシアそして軍事力を「持たない」日本は、アジアの覇権国家になる能力がなく、中国のみがその潜在力を有し、その力を露骨に振るい始めています。
日本政治が“矮小化”し、国民と遊離するだけではなく、World Politicsの流れからも取り残されつつあります。
先日の米国シンクタンク主催の「北朝鮮危機に関するフォーラム」で、米国の有識者と目される人物が「Japan is fully dependent on US military power,  and Abe-administration embraces(喜んで受け入れる)Trump-administration」と当然のように発言していました。
超大国になりおおせた中国、衰えは見せつつもGlobal Leadershipを死守せんとする超大国・米国は、アジア秩序の主導権争いの渦中にあります。
アジアは、米中の対峙と北朝鮮危機という厳しい地政学的な環境下にあります。本来ならば、日本がそれを打開するために、アジア太平洋平和秩序構想を提言、その実現に向けて動くべきです。
日米間の安全保障体制を基軸として、日米韓・日米印・日米豪などの三国間連携、アセアン諸国との連携による「アジア太平洋の安全保障と経済連携」の具体化の促進などが考えられます。
日本がその構想実現において、リーダーシップを奮うためには、自らの国、国民を自らの力で守る国家意志とそれを可能とする体制構築が必要不可欠です。

問題提起:北朝鮮危機と拉致問題
荒木和博様(特定失踪者問題調査会代表、予備役ブルーリボンの会代表、拓殖大学海外事情研究所教授)
〇継続テーマ:熊本震災より考える日本の自然災害対策


 
国連総会の場でトランプ氏が北朝鮮による横田めぐみさんらの拉致問題に言及し、また北朝鮮の核・ミサイル開発を国際社会全体の問題と位置づけました。
 
朝鮮半島の危機が迫るなか、解散総選挙で日本の政治を「空白」にしてはいけないと考えます。
 
朝鮮半島危機に関して、新潮4510月号で、川上高司拓殖大学海外事情研究所所長・教授が「先制攻撃迫る!米朝開戦後のシナリオ」で鋭く迫っています。
 
例えば、
l  ICBMの大気圏突入技術を確保すればICBMの実戦配備が可能となり、米国の先制核攻撃に対する第二撃能力を北朝鮮が持つことになる。その時期は、来年初めごろと予想される。よって、米国は、先制攻撃を行うか、あるいは核保有を認めるかの判断を、その時期までに、下さなくてはいけない。
l  米国が先制攻撃をした場合、日本にとって重要なことは:
²    韓国からの邦人退避
²    ミサイル着弾(ミサイル攻撃と特殊部隊の攻撃があるならば、東日本大震災規模の大災害が同時に3,4つ起こったような事態となる)。
²    韓国と北朝鮮からの難民危機(感染症蔓延のリスク、食料や住居の供給等)
l  北朝鮮の核を米国が認めると、北朝鮮の米国の先制核攻撃に対する第二撃力により、米国と同盟国(日本等)との核のディカップリングが生じ、米国の拡大核抑止能力が形骸化する。
 
「朝鮮半島という災危 北朝鮮処分の全内幕」(宝島社)(注記:荒木和博様の論考も含まれています)で、山口昇様(元陸将)が「有事であっても韓国内に自衛隊が入るのは困難」と指摘しています。
よって、最悪の場合、韓国国内の邦人5万人は「見殺し」状態に陥ることもあり得ます。
 
米国の北朝鮮策(金王朝崩壊を”期待的“前提にして、その前に、北朝鮮危機を活用して、THAADミサイルの韓国配備などによる対中国軍事包囲網を強化する)は、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間余裕を与えてしまうという「裏目」となり、米国が、戦略的対応を誤れば、「アジアあるいはユーラシアからも、キックアウトされる」シナリオが、現実味を帯びてくると考えます。
 
 中国は、米国により北朝鮮が支配されると、貴重な「緩衝国」を失うことになり、「米国が北朝鮮を先制攻撃した場合、中国は軍事介入するが、北朝鮮が米国をミサイル攻撃した場合の米国の反撃の際は、中立を保つ(810日・環球時報:『人民日報』系列のタブロイド紙)と、米国と北朝鮮の先制攻撃を抑止し、戦争を阻止しようとする国家意志を吐露しています。
 
 「核搭載のICBMだけでは、体制存続は困難である」ことを北朝鮮に分からせるには、軍事的圧力、制裁強化の背後に「リアル」なアジア平和秩序構想を控えさせなくてはいけないと思います。
 
 活発な議論の応酬を期待させて頂きます。


 自らを律するのが倫理性です。
外交、安全保障などの分野で、自立した理念と戦略で国家を動かすことができない日本に、国家としての倫理性が育まれてこなかったのは頷けます。
倫理性を喪った国家には、私益拡大を「判断基準」とする合理性が国家権力を担う政治そして行政に滲み渡り、「国家としての醜態」が露骨になります。
政治、行政が真に国民を守るための政策を構築、実行していない現状、そしてそれを是正する国民の声が政治、行政に反映しない無力感により、国民は「合理的無知」に堕ち込んでしまっています。
その結果、日本国民の多くが、殆ど何も知らない状況下で、自らの命、生活に係る「一大事」が、米国政府に従う政治、行政により決められていきます。
北朝鮮危機は、その窮極の例です。
北朝鮮は、グローバル新自由主義経済下での周辺国、そして米対中露の角錐の中での緩衝国と二重の「国家的窮状」よりの脱却を、核・ミサイル開発、サイバー攻撃能力強化に賭けてきました。
しかし、米国相手の「Power Game」は無謀であり、米軍による軍事攻撃、あるいは北朝鮮の経済崩壊に端を発する内部崩壊を、想定内の「シナリオ」として捉えるべきです。
米国は、半島有事の際、日本国民を救出する義務はなく(日米ガイドライン)、日本は、自らの力と才覚で、同胞を救い出さなくてはいけません。
拉致被害者そして韓国在留日本人(201610 1日現在:27,781名)を救出するために、我々は何を為すべきでしょうか。
 

問題提起:
²  朝鮮半島危機への日本の対応坂上芳洋様
²  北朝鮮の核ミサイル開発の衝撃―問われる米国の核の傘の信頼性と日本国民の覚悟―: 矢野義昭様
²  坂上様と矢野様のお話しに関し: 冨澤暉様
²  日本の財政を考える: 仲野晶子様
継続テーマ:
²  熊本震災の現状とアクションプログラム:水野哲也様 (熊本よりネットで参加)
²  保険医療政策・市民会議について:唐川伸幸様
²  自然災害対策と危機管理への政治と行政の大変革の在り方:松延洋平様


 
 
8月29日、北朝鮮西岸より発射された弾道ミサイルが、日本上空を越え、襟裳岬東方1180キロの太平洋に落下。
何の手出しもできない日本を嘲笑するような「一撃」でした。
 
主権国家としての体をなさず、自国民を危機に晒し、「手をこまねく」今の日本は、先の大戦で、戦陣に散り、戦火に斃れ、尊い人柱になった多くの人々の慟哭を心耳で聞き、リアリズムに徹した国防策とそれを発揮できる体制に早急に持っていくべきです。
 
 急な用事により、ご参加が叶わなかった坂上芳洋様の「北朝鮮のミサイル発射に伴う緊急提言」(添付資料をご覧ください)を代読させて頂きました
 
 坂上様は「日本政府による対北朝鮮抗議は一切効果を発揮していない」とされ、その危機感より、外交努力に加え、下記等を提案されています。
²  日米間による基地破壊の具体案と訓練の実施
²  巡航ミサイル(トマホーク)の導入要請配備
²  サイバー攻撃をミサイル発射施設に対して実施する
 
 冨澤暉様には冷徹な視点で、日本の安全保障を語って頂きました。貴重なお話しの中で最も印象に残ったのは、冨澤様が書かれた「軍事のコモンセンス・まとめ」中の下記のくだりです。
 
²  北朝鮮の最終目的が、自らが主導する朝鮮半島統一であるかぎり、彼らが韓国に先制核ミサイル攻撃をすることはない。無論、米・中・露の核保有大国にそれをする筈もない。
²  唯一、日本攻撃だけが可能性を持つ。無論、米国の核の傘に穴があいていないかという難しい条件如何なのだが、北・日・米間の認識の相違が危機をもたらすのであろう。
 
 矢野義昭様のお話しは、鬼気迫る「憂国の論」であり、「北朝鮮の核ミサイル開発の衝撃 -問われる米国の核の傘の信頼性と日本国民の覚悟-」を次のように締め括られています。
 
²  いま日本国民の一人一人が、この眼前の危機を直視し、他力本願ではなく自らの力で日本を守り、自らと家族を守る覚悟と行動があるか否かを問われている。
 
 矢野様は、北朝鮮の背後にいる中露と米国の戦略核バランスは米国不利に傾きつつあるとされ、下記等を提案されています。
 
²  米国が、日本と韓国の独自の核戦力を認め、自国の核抑止力との有事における相互連動、核のリンケージを強めることができれば、米国自身の核抑止力も高まる。そのためにも、核攻撃に対し、残存して報復できる能力(自衛的核戦力)のある潜水艦発射弾道ミサイル( SLBM)を保有すべき。
²  攻防を兼備した自立的な防衛力の強化と韓国、台湾、豪州、東南アジア諸国などの域内諸国との地域安全保障体制強化を進めるべき。
 
 仲野様は「日本の財政を考える」(添付資料をご覧下さい)で、データも駆使されながら、下記を鋭く指摘されました。
 
²  戦前、米国は日本の「弱点」(自然資源が乏しく輸入依存、貿易が断たれれば経済生活が破綻)を衝き、日本に勝利した。
²  それにも拘わらず、現在、日本は食糧自給率を低下させ(70%から39%へ)、ウラン、原油そして天然ガスなどのエネルギー源の輸入依存度が高く、120兆円相当の米国債(日本は米国債の番号のみを有し、何かの時は120兆円は凍結される)を保有し、「弱点」は是正されていない。
²  特別会計の問題点
l  日本の一般会計に対する特別会計の倍率は極度に高い。
Ø  日本 5
Ø  米国 0.58
Ø  フランス 0.47
Ø  英国 0.2
Ø  ドイツ 0.07
l  会計検査院などのチェック・監査が甘い。また、国家での審議も一般会計に比べ短く、厳密な審査が行われていない。
l  特別会計より、特殊法人(33法人)、公益法人(約9200法人)などの官製法人に多くの資金が提供され、官僚が多数天下っている。
 
熊本震災の現状、問題点については、水野様と伊敷様のご尽力により、現地ともネットでつながり、下記の水野様の報告・今後のアクションプランを聞くことができました。
〇自衛隊の件、道路工事ではなく、二次災害予防であれば、災害派遣による
手続きが妥当ではないかとの話を、熊本の自衛隊との会議で自衛隊より説
明を受けました。
〇災害派遣であれば、建設業協会の同意が必ずしも必要ないそうです。また、
これを踏まえて、地元での合意形成と、手順を踏んだ、申請手続きを進め
てゆこうと思います。


ミサイル防衛システムは、米国の「宇宙ベース・ネットワーク中心型」戦争システムとグローバルベースの米国と同盟国群との軍事ネットワークを守るものであり、それに日本が加わるためにも、集団的自衛権行使を可能にしないといけなかったわけです。
 
“敵国”が、米国主導の宇宙ベースとグローバルベースの軍事ネットワークの脆弱なポイント(例えば、MDの前線基地としてXバンド京都レーダー基地)を狙ってくることは容易に想像できます。
 
それに加え、最も憂慮すべきは「宇宙空間での核爆発」による米国主導の宇宙ベースとグローバルベースの軍事ネットワークに対する「破壊行為」です。
 
北朝鮮は7月4日に「火星14」新型弾道ミサイルを発射しました。このミサイルは垂直に近い角度の軌道で飛行し、高度2,802kmまで上昇し、その後、大気圏に再突入し、落下しました。
 
 宇宙空間(地表より100km以上)での核爆発の影響を、米国の科学者団体が調査した結果が、2004年に発表されました。
 
それによると、北朝鮮上空で核爆発が起こると、北朝鮮の人々には急性の影響は殆ど無いが、780km上空を周回するイリジウム衛星編隊、 1415km上空を周回するグローバル衛星に深刻な影響が発生し、米国の「宇宙ベース・ネットワーク中心型」戦争システムが機能しなくなる恐れがあるとのことです。
 
 垂直に打ち上げられた核弾道ミサイルを、迎撃ミサイルで撃ち落とすことは至難な業であり、MD強化に励んでも、「新型の核戦争」としての宇宙での核爆発抑止には余り効果が無いと思われます。
 
 核弾道ミサイル基地への先制攻撃か、宇宙での核爆発を行った国への核兵器で報復するのか、従来の核抑止理論では説明できないことになります。
 
 また、米国主導のMDに包囲されつつある中国にとって、「新型の核戦争」は軍事戦略の視野に入っていると考えます。
 
金正恩が自らの支配体制を米国に認めてもらうため、最大のレバレッジを効かせられる「一手」が、米国の「宇宙ベース・ネットワーク中心型」戦争システムに大打撃を与えられる核弾道ミサイルです。
 
その北朝鮮の核兵器弾道ミサイル攻撃能力をどのように抑止するかは、最大の敵、中国を見据えた米国の「新型核戦争」戦略を占うものになると思います。


1995年、北朝鮮は射程1200-1500kmのノドンを配置し、それ以来、日本は弾道ミサイル攻撃のリスクに晒されてきました。
 
しかし、外交・安全保障は米国任せで「平和国家」を気取ってきた日本は「無策」のままで、今や、その安全をトランプ大統領に握られています。
 
政府を叩くために、野党は矮小なことに血眼になり、北朝鮮危機という国家安全保障に関する与党・政府との真摯な議論は乏しく、下記のような「切実」かつ「緊急」な問題は宙に浮いたままです。
l  ミサイル攻撃のリスクとその具体的対応策
l  日本独自の敵基地反撃能力
l  北朝鮮による日本へのミサイル攻撃に対して、イージス艦による海上配置型迎撃ミサイル(SM3)や地対空誘導弾パトリオット(PAC3)に、北朝鮮の軍事制御システムに対するサイバー攻撃をダイナミックに組み合わせた防衛力
l  韓国にいる日本人の避難、拉致被害者救出
l  日本への米国の核の持ち込み
 
今月号の「外交」で、防衛大臣就任前の小野寺代議士が「陸上に新たな装備を置くことが、ミサイル防衛の基本です。新たなアセットとしての陸上イージスを提言(今年3月自民党提案・弾道ミサイル防衛提言書)に加えました」とンタビューに答えています。
 
それを受けるように、防衛省が陸上イージス(イージス・アショア)の導入に向けた関連経費を、平成30年度の概算要求に盛り込む方針を決めたとの報道がなされました。のんびりした「話」です。
 
国家間の角錐が、サイバー空間(あらゆる形態のネットワーク化されたデジタル活動)でも繰り広げられる時代となりました。
 
憲法第9条に縛られたままの日本では、陸・海・空そして宇宙空間に続く「第五の戦場」とされるサイバー空間でも「周辺」に追いやられ、他人(米国)任せの国家防衛から脱却できず、国際的な協力的安全保障の輪で存在感を示すことができなることを危惧します。

「環境権」に関する国民投票: 愛知和男様

⚪️環境問題から、日本そして世界を考える: 愛知和男様
⚪️日本版FEMAの創設: 松延洋平様
⚪️環境問題 ー 三つの事象から: 仲野晶子様
     ①農薬: 生態系の崩壊を加速する
     ②プラスティック: 環境ホルモンなどによる自然・人・経済への影響
     ③過剰な地下水利用: 水資源の危機を招く
継続課題:
⚪️熊本震災の現状とTown Meeting開催の提案:  水野哲也様
「環境問題」を通して、日本の民主政体も考えたいと思います。


自然災害を被った地方への財政支援は国庫頼りです。
例えば、災害復旧の2/3は国庫が負担しており、地方交付税措置を入れると、98.3%もの国庫負担となっています。

国の累積負債は1060兆円にも膨れ上がっています。
そして、人口減少、高齢化、イノベーションの低迷などにより、名目成長率上昇も期待できず、今の社会保障・経済・財政システムに甘んじているだけでは、国家財政の悪化は食い止められません。

一方、巨大災害の切迫性、社会インフラ(道路、港湾、下水道、治水など)の老朽化、緊急時における食料・水・エネルギーの制約性に加え、地球環境悪化もあり、今後、自然災害、複合災害の復旧への政府による財政出動のニーズは高まっていきます。

このままでは、「財政余地」の限界による「災害復旧の破綻」は目に見えています。

それを何とか克服しようというのが、国主導のSmart Shrink構想です。
それはCompact City構想と類似性のある政策であり、人口減少・高齢化が進む地域社会のQOL(生命・健康衛生・社会的生活・文化的生活の質)の維持と向上を目指す地域マネジメント手法の総称です。

例えば、地方都市の周縁部にある「土砂災害特別警戒区域」などから、安全な場所への住民の移転を進めようというものです。規則的措置としての移転勧告は可能ですが、住民移転は捗っていないようです。

日本の災害に対する脆弱性は、諸々の国家的問題を引き起こします

日本は巨額な政府負債を抱えていても、円は安全資産とされ、世界経済が揺れ動く度に、円が買われてきました。

その理由の一つが、日本(政府&民間)は過去25年間に渡って、世界最大の対外資産(2015年:2兆8000億ドル)を所有し、「安全国家」として、低金利で長期資金を調達(対外債務),し、より長期で高利の債券を購入(対外債権)し、ネットベースでそれなりの投資収益を挙げてきました。

しかし、対外資産Maturityの長期化と対外負債Maturityの短期化が進んでおり、金利上昇リスクに日本は晒されています。

さらに、日本は災害に対して脆弱な国家となっており、「安全国家としての"特権"」も風前の灯火になっているとの危機感で、社会保障・経済・財政システムの改革に取り組むのが国家的緊急課題です。

皆様の提言と議論へのご参加を期待申し上げます。


「環境問題」を通して、日本の民主政体も考えたいと思います。
 
“在日米軍と環境問題”
 
民主主義は「統治されるものが統治し、統治するものが統治される」という原理を持ちます。日本の場合、憲法第9条と日米安保の融合が、国家安全保障そして「国体」の基礎となっています。つまり、統治されるのは日本国民ですが、「統治機能」を米国も担っており、民主主義の原理が十分機能しているとは思いません。
 
その結果、日米地位協定における環境条項の概要は、下記の通りとなっています。
 
²  基地内への立入りが認められる場合としては、環境事故(漏出)と土地の返還に関する現地調査のみ。日本側の権利としての立入権が認められるのか、自治体関係者も立ち入れるのか、その範囲はどこまで及ぶのか等も明確でない。
²  環境を汚染した場合の原状回復・浄化義務を米軍に課さず、環境改善経費を日本側が負担することになっている等、世界の環境保全法制の大原則である「汚染者負担の原則」が顧慮されていない。
 
韓国では韓米地位協定に「環境条項」があり、基地内での汚染について、各自治体が基地に立ち入って調査できる共同調査権があります。また、返還された米軍基地で汚染が見つかれば、米軍が浄化義務を負います。
 
“民主主義を損なう「自治体の自律性欠如」”
 
カリフォルニア州は、トランプ政権の方針(化石燃料重視)に逆らい、地球温暖化の対策法案を州議会で成立させました。米国民は、連邦制国家としての本来の民主主義を取り戻そうと、動き始めました。
 
一方、日本では、地方の国に対する相対的なパワーが脆弱なままでは、民主主義は根付いていません。
 
例えば、下記の例のように、官僚主導の中央集権体制により、自然災害対応における地方自治体の自律性が抑えられています。
 
²  他の自治体からの避難住民を支援するために、被災者受入自治体が必要経費を請求できる制度設立を、知事会が国に要請したが、実現せず。
²  「みなし仮説」(仮説住宅を新築するのではなく、民間受託を自治体が借り上げて、他の自治体から来た被災者に提供する)に地方交付税が使えなかった。
Ø  地方交付税制度は地域住民の支援を前提に、需要と歳入の差額を国が交付金として渡す。
Ø  激甚災害法は、国が資金をプールして、災害発生時に自らの地を守った自治体にお金を上乗せして、支給すると定めている。
 


環境問題とは、環境汚染問題、エネルギー問題、地球温暖化問題、自然災害問題などを含みます。

「ヒューマン・セキュリティ ー ヒューマン・ケアの視点から」(医事評論社)の第11章「バイオ・食セキュリティと人間安全保障ー生命・生活を護るこれからの医・農・食・環境」で、下記の様に、松延様が「日本版FEMA」を提唱されています。

⚪️地方自治体の基盤が弱く、NGOの歴史も浅い我が国では、防災や福祉などで新し
    く求められるコミュニティの形成には至っていない。
⚪️生命健康から自然災害までの危機に対して、包括的に対応する「パンデミック・ 
    オールハザード事前準備法」が2006年に制定された。また「地域の復元力の
    定着」と「保健及び緊急対応システムの強化・維持」が4年毎に策定されてい
    る。
⚪️内閣、警察、厚生労働、外務、農水、文部科学、防衛等や、職種間の縦割りの弊
    害が多く、危機対応の遅れが常態化している。それから脱却するために、米国の
    連邦緊急事態管理庁(FEMA)のような組織を新設する議論を再活性化すべきであ
    る。

 日本版FEMAの提案に、水野様が獅子奮迅の活躍により抉り出した「熊本震災対応の問題点」を反映させると「説得力」が増すと考えます。

 環境問題のかなりは、新自由主義経済下で、利益極大化を目指すグローバル企業の投資・開発により引き起こされています。

  新自由主義は、Libertarianism(自由放任主義)とは異なり、「治安・教育・金融政策・租税政策・福祉政策そして市場に対する"国家介入"を容認し、金融資本を中心とする巨大多国籍企業を保護・育成し、市場社会の秩序不安定化に対処するための国家統合、増税を求める」存在になっています。

 それは「国家政治の経済化」であり、それが引き起こした国民間の資産・所得格差の拡大は、「共通の価値観の下、人々が連帯して、共同体を統治する」という民主主義政体を脆弱にします。

 自由主義経済と議会制民主政体のバランスを目指す自由民主主義は、民主主義が「空っぽの形式」(議会の形骸化)に陥った結果、そのバランスが崩れ、自由主義経済における巨大多国籍企業の「自由度」を高めました。

 そして、民主主義は、その過激な一面としてのナショナリズムにより,「自由度」に反撃を開始し、トランプ大統領を生み出しました。

  自由主義と民主主義のバランスを取り戻す必要があります。  

 自然災害などの危機に対応するためには、地方・地域が自立し、地方自治体、企業、金融機関、中間組織そして専門家が協働、連帯する必要があります。それは民主主義そのものであり、民主主義の「復権」に繋がっていくと思います。

 大規模な自然災害も含む「緊急事態」が発生した場合、憲法を一時停止し、政府に権限を集中させる「国家緊急権」は、平時の民主的な緊急事態対応システムが確立していない状況では、多くの国民の支持が得にくいと考えます。

自由民主主義と共和主義(全構成員の共通の利益が存在するとして、それを実現することを目指す)の共生が、我々、国民の生活そして命を支える「基盤」になると思います。

活発な議論の展開を期待申し上げます。


気候変動、生物多様性、窒素とリンの循環、オゾンホール、海洋酸性化、化学物質による汚染などが地球環境を脅かしています。最初の三つは閾値を超え、「不可逆的」で急激的な環境劣化を引き起こす段階に入ってしまっています。
 
よって、ドイツ・ハンブルクで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、米国以外の19カ国が、気候変動への取り組みを決めたパリ協定を「不可逆」として、その履行を再確認したことは当然のことです。
 
良好な環境を享受するためには、環境保護に努める義務と責任が伴います。それを無視したトランプ米政権は、国際社会で孤立せざるを得ません。
 
環境劣化は、成長という貨幣価値の量的増加で社会の「豊かさ」を決める資本主義的社会発展モデルの見直しを訴えるものです。
 
環境権「健康で快適な環境の回復・保全を求める権利」を憲法上の権利としようという超党派の動きが、以前からあります。それは、環境権を自由権として認めるのではなく、国家が環境保全に取り組むことを義務付けようというものです。具体的には日照権、静穏権、眺望権などをさし、地球環境などを視野に置いたグローバルなものではありません。
環境権の対象を矮小化するのではなく、添付の拙論(「セキュリティ研究」20177月号掲載)でも提唱させて頂いているように、「環境保全」も、人間安全保障と国家安全保障を融合させる国民国家安全保障の中に取り込んでいくべきと考えます。
企業の自由主義的権利を抑制する可能性が強い「環境権」の是非は、民主的な意志形成により決められるべきです。しかし、残念なことに、今の日本の民主主義は形骸化しています。
 
民主主義には下記の様な二つの流れがあります。
 
²  平等化を全面に押し出し、社会関係、経済関係を変革するために、権力を集中させることが望まれる「非自由主義的民主主義」であり、ルソーに始まり、マルクス主義に継承されたものである。
²  主権が民衆にあることを認め、同時に権力が個人の自由と権利を侵害しないことを求める「自由主義的民主主義」。
 
「非自由主義的民主主義」が直接民主政を原理にしたのに対し、「自由主義的民主主義」は代議制による間接民主政を取り、政党間の競合を重視しました。
 
しかし、前述のように、間接民主主義がうまく機能せず(議会の形骸化)、政党と公衆が離反し、民主主義が機能していません。
 
議会の多数決による決定は民主主義そのものですが、その前に、個人の異質性(自由)を認めた上で、自由闊達な討論を行うべきです。
 
国民投票を視野に、ある国家的課題とその具体的な対応を、公開討論を通じて、公衆が考えていくことが、相反する民主主義(相対性と普遍性を併せ持つ)と自由主義(相対性)の融合を生み出すと思います。
 
「環境」はその国家的課題の一つと考えます。多くの方々の議論への参加を期待申し上げます。


 7.25円卓会議「環境問題を考える」も、充分な思索に基づき、含蓄に富んだ問題提起者のお話しにより、素晴らしい議論の展開となりました。参加された皆様に改めて御礼申し上げます。
 
愛知様の「環境で日本はリーダーシップを奮うべきである」そして「地球温暖化などの地球環境問題は、国を超える発想そして多国間の協働が無ければ対処、解決できない」とする言葉は、地球環境問題に対し、腰が引けた日本政府の姿を浮き彫りにし、日本の進むべき道を明らかにしました。
 
仲野様の問題提起は、環境問題に対し、①農薬②プラスティック③過剰な地下水の利用の「三つの事象」から鋭く迫るものでした(詳細は添付資料をご覧下さい)。
その「憂慮すべき事実」の指摘は、経済のSustainabilityと環境維持&改善を「共存」させる理念と具体策を、我々に問うものでした。
 
長年に渡って「食と農の安全・安心」に取り組まれてきた松延様のお話しは多岐に渡り、非常に示唆に富むものでした。
特に印象に残ったのは、グローバル化が進む「食の安全」(例えば、HACC:食の安全の国際基準)において、日本が遅れをとっているという「警鐘」です。
我々が議論してきた日本の「食の安全保障」には、グローバルな視野と戦略が必要であり、その「警鐘」は大きく響くものでした。
 
水野様の「熊本震災の現状報告」は、あらためて自然災害に対する政治そして行政の対応の稚拙さを明らかにしました。
「本当に、この国は被害者を真剣に救う気持ちと行動力があるのか」との思いを強くし、具体的なアクション(下記のような政府への提言も含む)の重要性を再認識しました。
²  Smart shrink構想における住民参画の具体案
l  Smart shrinkは地域の身の丈にあった都市機能を維持・保有していくためには、既存設備等を破棄しても構わないとする。
l  国土交通省社会資本整備審議会によると、特定の人しか使用していない、または稼働率の低い公共の集会施設・文化施設や、誰も利用していない道路、空き地だらけの工業団地など、不要、もしくは他の施設で代替可能と判断できれば、思い切って統合や廃止・売却をしてしまうというものである。
²  自衛隊「災害派遣」(自衛隊法83条)の迅速かつ柔軟な実行
²  防災大臣の権限と予算強化
²  災害における地方自治体の自主性強化と独自予算の実現策
 
東京大空襲で10万人程の犠牲者が出ました。政府はその犠牲者の調査を何ら行いませんでした。「米国戦略爆撃調査団」(850名の米国軍人と300名の日本人の調査による)の報告でも、死体の検視の事実が一切確認されなかったとしています。
 
一方、ドイツは内務省の任命による特別調査委員会が、ドイツ人医師により、空襲時の死者、3万人程の検視と傷害者の調査が厳密に行われました。
 
その彼我の差が、今、米国とは是々非々の関係で欧州諸国をリードするドイツと、未だに米国追従で独自のアジア外交を展開できず、さらには、災害に国家を挙げて迅速に対応できないでいる日本にさせてしまいました。